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| 解 説 文 |
| 便 利 は 不
便? |
山口大学教育学部助教授 スクールカウンセラー 大石 英史 | |
アンケート結果を見ると、自分の携帯電話を持っている子どもたちは、学年が上がるに連れて上昇し、中2年女子で47・6%に達しています。また、メールおよびチャット経験者は同じ中2年女子でそれぞれ79・4%、26%。いずれにせよ、これらの数値は今後増大していくことになるでしょう。
携帯電話のメールやチャットと呼ばれるコミュニケーション・ツールは便利なものです。思いついたときに、その場で相手にメッセージを届けることができますし、電話よりも安いことも馬鹿になりません。また、メールだから自分の気持ちを率直に出せるという人たちもいます。しかし、便利な分ちょっとその使い方を誤ると、様々な心の行き違いを生じやすく、場合によっては、大きな事件にまで発展していく可能性を持っています。例えば、自分が出したメールの返事がこないことを無視されたと感じることもありましょうし、逆にそのことを考えてメールをもらったときにはすぐに返事を出さなければということにもなります。
このようにして、携帯電話を一時も手放せない高校生たちがかなりいると言われています。また、いったん出したメールの言葉は訂正が効きません。つまり、相手の立場や気持ちを十分に想像しながら打たないと、自分のそのときの気持ちだけで打った言葉が、時に相手にとって侮辱や攻撃と取られたりすることがあるわけです。このような誤解が膨らんで大きなトラブルを招くこともあり得ます。誤解を最小限に留めるには、相手の立場に立って慎重に言葉を選び、絵文字等を上手に使うなどして、受け止める側の心情を不快なものにしない配慮が必要になります。
これらのことを考え合わせると、一見便利なこのコミュニケーション・ツールも、その内実は「大変神経を使うけれども手放せない道具」だということができるかもしれません。なぜなら、実際に会って顔を見て話せば、先に述べたような大変さや誤解の多くを免れることができるかもしれないからです。もちろん、面と向かって話すときにも、他者への配慮と自己の誠実さが問われることは言うまでもないことですが。
しかし、もうこの日本社会でパソコンや携帯電話を使わないことはよほどの信念でもない限り難しいことでしょう。したがって、今の子どもたちには、これらのツールを安全に使うための教育が必要だと思われます。その第一は、この一見便利な道具も実は、コミュニケーションについての熟練を要するものだという認識のもとに、その使い方を通して、人への配慮について学ぶものでありたいものです。
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| 子どもたちをとりまく環境は |
下関市立東部中学校 教諭 原 小百合 | |
現在私たちの生活環境は、「早い」「簡単」「便利」がキーワードになっています。殊に20世紀末から21世紀にかけての科学の進歩はめざましく、ハイビジョンテレビや食器洗浄機・洗濯乾燥機などの家電品、パソコン・携帯電話等々、本当に便利な世の中になり、ひと昔前からは想像もつかないほど生活様式が変化してきています。
今の子どもたちは、生まれたときからこの「早い」「簡単」「便利」な環境にあります。しかし、人との関わりや自分の心と向き合うことは「遅い」「難しい」「不便」な状況を伴い、思い通りにならず思い悩むことばかりです。「早い」「簡単」「便利」な環境に慣れてしまっている子どもたちは、この「遅い」「難しい」「不便」なことにどう対処しているのでしょうか。今回のアンケートでは、友達との遊び方や親子のコミュニケーション事情をテーマとして、パソコン・携帯電話の利用状況などから、それを探る内容でしたが、データを見ると、子どもたちはほぼ発達段階に応じた適切なコミュニケーション力が身についており、メールやチャットもひとつのコミュニケーション手段として、上手に利用できているように思われました。
しかし近年、ちょっとしたことから友達を殺めたり、ほんのささいなことから親が子を、子が親を傷つけるといったニュースもよく聞きます。また、いじめや不登校・ひきこもりなど、孤独感を味わっている子どもの事例も増えています。もしかしたら「早い」「簡単」「便利」な環境は、思い通りにならず思い悩んでいる子どもたちに、適切な対処法を処方せず、さまざまな歪みを生じさせているのかもしれません。また、インターネット犯罪も増えていますから、メールやチャットもコミュニケーション手段とはいえ、十分な配慮が必要でしょう。
大人も子どもも「早い」「簡単」便利」に流されて、心の奥にあるものに気づきにくくなってしまい、心の満足感が得にくい時代になっているように思います。たまには夜空を見上げて星を眺める、本を1冊読み切るなど、心の栄養補給を十分にしていきたいものですね。その心の満足感がよりよい人間関係づくりに発展していくにちがいありません。
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| 望ましいコミュニケーションの方向性 |
岩国市立東小学校 教頭 兼重 光雄 | |
今回の『子どもたちのコミュニケーション事情』という本調査結果について、「人とのかかわり」と「感性」という2つの視点から考えてみたいと思います。
現在の子どもたちは、様々な人と直接かかわる経験が希薄になってきているという傾向がうかがえます。子どもたちは、「多くの友達と遊ぶことが楽しい」と感じながらも、パソコンや携帯電話、ゲーム機、テレビ等の室内遊びや一人遊びの割合が高いという結果が示され、子どもたちの生活環境の変化を表していると考えます。
以前は、異年齢集団を含めて、様々な人とかかわりながら、自分たちなりに遊びやルールを考えながら、遊びを創り出していたことを思い出します。そのような遊び体験の中から、多少のトラブルを経験しながらも、自分の思いを相手に的確に伝えること、相手の立場を考えようとすること、そして、適切に相手とかかわることを知らず知らずのうちに学んできたものです。直接相手と顔を合わせながらの体験、全身を使って共に遊ぶという、いわゆる昔の遊びのスタイルの中に、人とのかかわり方を学ぶことのできる「遊びの不易」の部分が残されているのではないでしょうか。
また、人と直接かかわるということは、直接相手の優しさや喜び、また苦しみや悲しみなど、人の心にふれることであり、自分の心に刺激を与えるものです。その刺激は、自分の感性に揺さぶりを与え、豊かな心が育っていくものと考えます。
「最近の子どもは変わって来た。」という言葉をよく耳にしますが、本当に子どもたちは変わってきたのでしょうか。家族との団らんを楽しみにしていることや約9割の子どもたちが小さい頃に読み聞かせをしてもらったことを覚えていること、本からたくさんのことを得ることができると考えているなど、時代は変わっても、子どもたちは本来の子どもたちの姿を備えていると思えるのです。ただ、変わって見えると感じるならば、その要因を探る際、親である私たち自身が、「子どもとのかかわり方」について真剣に向き合っているか、親自身が豊かな感性を身に付けようとしているかについて、今一度見つめ直したいものです。
我が子に見る姿を親自身に置き換えながら、親子共に望ましいコミュニケーションを考えていく際の糧として、本調査結果を生かしていきたいものです。
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| 寄 稿 文 |